リーマンショック、それは2008年に起こりました。
よく聞く単語の一つですが、実際何が起こったのかを知っている人は意外と少ないのではないのでしょうか?
すべては、2008年9月、アメリカの巨大投資銀行リーマン・ブラザーズが突如として破綻したことから始まります。その時、表向きは安定していたグローバル経済は、実は足元がぐらぐらと揺らいでいたのです。リーマンの破綻は、単なる一つの企業の失敗ではなく、複雑に絡み合った金融市場全体のバランスが崩れ、世界中にパニックを引き起こしました。
住宅ローンのバブルが弾け、誰もが「安全だ」と思っていた投資が一瞬にして無価値になり、人々の不安は一気に高まりました。この出来事は、私たちが「金融の仕組み」について考え直さざるを得なくしたターニングポイントだったのです。
今回はそんなリーマンショックを紹介します!
〇リーマンショックとは
リーマンショックは、2008年に発生した世界的な金融危機で、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に世界中に影響が広がりました。以下は、リーマンショックに至るまでの出来事を時系列で解説します。
1. サブプライムローンの拡大(2000年代初頭〜2006年)
2000年代初頭
アメリカでは、低金利政策が続き、住宅ローン市場が活況を呈しました。特に、信用力の低い人々向けの住宅ローン、いわゆる「サブプライムローン」が急増し、住宅購入者が増加しました。金融機関は、返済能力が低い借り手にも積極的に融資を行い、住宅価格は急騰しました。
住宅バブルの形成
サブプライムローンの貸し出し拡大と共に、住宅価格は年々上昇しました。金融機関は、サブプライムローンを束ねた「住宅ローン担保証券(MBS)」や「債務担保証券(CDO)」などの複雑な金融商品を作り、投資家に販売しました。
2. 住宅バブルの崩壊と金融危機の前兆(2006年〜2007年)
2006年
アメリカの住宅市場はピークに達し、その後住宅価格が下落し始めました。住宅価格の下落により、サブプライムローンの借り手はローンを返済できなくなり、住宅を手放す人が増えました。これにより、住宅ローン関連の金融商品の価値も下落し、金融機関に損失が発生し始めました。
2007年
サブプライムローン市場での返済不履行が拡大し、金融機関の損失が増加しました。大手投資銀行ベア・スターンズの2つのヘッジファンドが崩壊し、これが金融危機の前兆となりました。
3. リーマンショックの発生(2008年)
2008年3月
ベア・スターンズの救済
ベア・スターンズは、サブプライムローン関連の損失が膨らみ、資金繰りに行き詰まりました。アメリカ政府はベア・スターンズを救済し、JPモルガン・チェースによる買収が行われました。これにより、金融市場に対する不安は一時的に緩和されました。
2008年9月
リーマン・ブラザーズの破綻
2008年9月15日、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻しました。リーマンはサブプライムローン関連の損失で資金繰りに行き詰まり、アメリカ政府は公的救済を行わず、破産申請を行いました。リーマンの破綻は、金融市場に大きな衝撃を与え、世界的な金融危機の引き金となりました。
2008年9月:AIGの救済
リーマン破綻後、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が破綻の危機に陥りました。AIGは、サブプライム関連の損失により資金繰りが悪化していましたが、アメリカ政府は850億ドルの公的資金を注入し、AIGを救済しました。
4. リーマンショックの世界的な影響(2008年〜2009年)
金融市場の混乱
リーマン破綻をきっかけに、世界中の金融市場が混乱し、株式市場は大幅に下落しました。アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアの主要金融機関も大規模な損失を被り、多くの銀行が破綻の危機に直面しました。
信用市場の凍結
金融機関同士の信用が失われ、貸し出しが停滞しました。これにより、企業は資金調達が困難となり、経済活動が停滞しました。特に、資金繰りに依存していた中小企業が大きな影響を受け、失業者が急増しました。
各国政府による金融救済策
各国政府は金融危機に対処するため、緊急の救済策を打ち出しました。アメリカでは、**7000億ドル規模のTARP(不良資産救済プログラム)**が成立し、銀行の不良債権を買い取るなどの救済措置が行われました。ヨーロッパ各国や日本も、銀行の資本注入や金融市場の安定化策を次々に打ち出しました。
5. リーマンショック後の影響(2009年以降)
世界経済の深刻なリセッション
リーマンショックにより、世界経済は深刻なリセッション(景気後退)に突入しました。企業の倒産や失業率の急上昇、消費の減少など、経済全体に大きな打撃が広がりました。アメリカ、日本、ヨーロッパなどの主要国で経済成長が大幅に鈍化し、世界的な景気低迷が続きました。
金融規制の強化
リーマンショックを教訓に、金融市場の規制が強化されました。特に、過度なリスクテイクや複雑な金融商品の取引に対する規制が厳しくなり、各国政府や国際機関が金融システムの安定化に向けた取り組みを強化しました。
〇リーマンショックの原因
リーマンショックの原因は、アメリカのサブプライムローン問題を中心に、金融市場における複数のリスクが連鎖的に拡大し、金融システム全体が崩壊寸前に陥ったことにあります。以下に、リーマンショックの主な原因を詳しく説明します。
1. サブプライムローンの過剰拡大
サブプライムローンとは
サブプライムローンは、信用力が低い借り手(低所得者層)に対して高金利で提供される住宅ローンです。サブプライム層は通常、返済能力が低いとされるため、高リスクの借り手ですが、アメリカでは低金利政策により多くの人々がこのローンを利用して住宅を購入しました。
住宅バブルの形成
低金利と緩いローン基準により、多くの借り手が住宅市場に参入したことで、住宅価格は急騰しました。借り手も金融機関も、住宅価格が上がり続けると信じていたため、ローンが返済不能になっても住宅を売れば損失を回避できると考えられていました。しかし、住宅価格は限界に達し、2006年頃から下落し始めました。
ローン返済の滞納
住宅価格の下落に伴い、サブプライムローンの借り手は住宅を売却しても借金を返済できなくなり、多くの借り手がローン返済を滞納しました。これにより、サブプライムローン市場での不良債権が急増しました。
2. 金融商品の証券化とリスクの拡散
MBS(住宅ローン担保証券)とCDO(債務担保証券)
金融機関はサブプライムローンを複数束ねて証券化し、「住宅ローン担保証券(MBS)」や「債務担保証券(CDO)」として販売しました。これにより、金融機関はローンを資産として転売でき、投資家は高リターンを期待してこれらの証券を購入しました。
リスクの見えにくさ
これらの金融商品は、複雑に構成されており、どれほどのリスクが潜んでいるかが分かりにくい状態でした。多くの投資家や金融機関はリスクを正しく評価せず、MBSやCDOを「安全な商品」と誤認し、世界中で取引が広がりました。これにより、サブプライムローンのリスクがグローバルな金融市場全体に拡散しました。
3. 信用格付機関の問題
誤った信用評価
MBSやCDOといった複雑な金融商品に対して、信用格付機関(ムーディーズやS&Pなど)は過剰に高い評価を与えていました。本来、高リスクであるべきサブプライムローン関連の証券が、安全な投資先として評価され、AAA(トリプルA)などの高格付けを受けていたため、多くの投資家や金融機関がリスクを認識せずにこれらの商品に資金を投じました。
信用格付機関と金融機関の利益相反
格付機関は金融機関から手数料を受け取る仕組みになっていたため、金融機関に有利な格付けを行うインセンティブが働き、実際のリスクが十分に反映されない格付けが行われたことが、危機を深刻化させました。
4. 金融機関の過剰なリスクテイク
過剰なレバレッジ(借入による投資)
金融機関は、借入金を利用して大規模な投資を行っていました。特に投資銀行は自己資本に対して過剰な借金を抱え、大規模なリスクを取っていました。レバレッジをかけることで、利益を倍増させることができる一方で、損失が発生した際にはその影響も倍増します。
リスク管理の不備
金融機関は、MBSやCDOを大量に保有し、これらの商品が安全であると過信していました。リスク管理が甘く、急激に損失が発生した際に適切な対応ができず、金融機関は大規模な損失を抱えることになりました。
5. 住宅バブルの崩壊(2006年以降)
住宅価格の下落
2006年をピークにアメリカの住宅価格が下落し始めました。住宅価格の下落により、ローンを返済できなくなる人が続出し、住宅を売却してもローンを完済できない「逆ザヤ」の状態に陥る借り手が急増しました。これにより、サブプライムローンの返済滞納率が急上昇し、金融機関の損失が拡大しました。
金融市場への波及
住宅市場の崩壊により、サブプライムローンを基にした金融商品の価値が急落しました。金融機関がこれらの証券を保有していたため、損失が膨らみ、次々と経営危機に陥りました。特に、リーマン・ブラザーズやベア・スターンズといった大手投資銀行が巨額の損失を抱え、資金繰りに行き詰まりました。
6. リーマン・ブラザーズの破綻(2008年9月)
リーマン・ブラザーズの危機
リーマン・ブラザーズは、サブプライムローン関連の金融商品に多額の投資を行っており、住宅バブルの崩壊により大規模な損失を抱えました。2008年9月、リーマンは資金繰りが行き詰まり、破産申請を行いました。リーマンの破綻は、金融システムに大きな衝撃を与え、金融市場全体が信用不安に陥りました。
信用市場の凍結
リーマン破綻後、金融機関同士が信用できなくなり、互いに資金を貸し出すことができなくなりました。これにより、企業や個人が資金を調達できず、実体経済にも悪影響が広がり、世界的な景気後退が発生しました。
7. 金融システムのグローバル化と連鎖的な影響
グローバルな金融システムの脆弱性
サブプライムローン関連の金融商品は、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやアジアの金融機関にも大量に販売されていました。そのため、アメリカで発生した危機が、すぐに世界の金融市場に波及しました。特に欧州の大手金融機関も多額の損失を被り、国際的な金融システム全体が混乱に陥りました。
リーマンショックの原因は、サブプライムローンの過剰な拡大、これに基づく金融商品の証券化とそのリスクの拡散、信用格付機関の誤った評価、金融機関の過剰なリスクテイク、そして住宅バブルの崩壊が複合的に絡み合ったことにあります。リーマン・ブラザーズの破綻は、この危機が顕在化した象徴的な出来事であり、結果として世界中の金融市場と実体経済に大きな影響を与えました。
〇リーマンショックの教訓は?
リーマンショックは世界的な金融危機を引き起こし、金融市場の崩壊や経済の大混乱を招きました。この出来事からは、金融システムの脆弱性やリスク管理の重要性など、多くの教訓が得られました。以下は、リーマンショックから学んだ主な教訓です。
1. 過度なリスクテイクの危険性
レバレッジの危険性
リーマンショックでは、多くの金融機関が過度な借入(レバレッジ)を行い、巨額のリスクを取っていました。レバレッジを利用して投資を行うと、利益が大きくなる可能性がありますが、損失も同様に拡大します。リーマンショックは、金融機関が自己資本を超えてリスクを取りすぎることの危険性を示しました。
リスク管理の甘さ
リスク管理が適切に行われていなかったことも、金融機関の破綻を招きました。特に、サブプライムローンやそれを証券化した金融商品に対するリスク評価が甘く、複雑な金融商品の本当のリスクが見えていなかったため、投資家や金融機関が損失を回避できませんでした。リーマンショックは、金融機関に対して厳格なリスク管理の必要性を再認識させました。
2. 金融商品の透明性と理解の重要性
金融商品の複雑化
サブプライムローンをベースにしたMBSやCDOといった複雑な金融商品が広く取引されていましたが、投資家や一部の金融機関は、これらの商品のリスクを正しく理解していませんでした。リーマンショックを通じて、金融商品の透明性が求められ、投資家がリスクを理解できるようにするための情報開示の重要性が再確認されました。
金融市場の複雑さのリスク
複雑な金融商品が市場に広がることで、誰がどのようなリスクを持っているかが不明瞭になり、危機の際に市場全体が動揺しました。金融市場の複雑さ自体がリスクを増大させる可能性があるという教訓が得られました。
3. 規制の必要性と金融監督の強化
金融規制の緩和による危険性: リーマンショックの背景には、アメリカで進められていた金融規制の緩和がありました。特に、金融機関が自由にリスクを取れる環境が整えられていたため、多くの金融機関が過度なリスクテイクに走りました。リーマンショック後、金融機関が適切に管理され、システミックリスクを回避するための厳しい規制が求められるようになりました。
システミックリスクの管理: リーマンショックは、個々の金融機関だけでなく、金融システム全体に対する規制と監視が不可欠であることを示しました。金融機関の破綻が他の金融機関や市場全体に波及し、システミックなリスクが広がることを防ぐため、金融監督当局は全体の健全性を監視する役割を強化する必要があるという教訓が得られました。
4. 信用格付け機関の役割と責任
信用格付け機関の問題: リーマンショックでは、信用格付け機関がサブプライム関連の証券に対して過大な評価を与え、投資家がリスクを過小評価する原因となりました。信用格付け機関は、金融市場において重要な役割を果たしていますが、格付けの精度と透明性が求められるようになりました。
利益相反の問題: 信用格付け機関が金融商品を発行する企業から報酬を受け取る仕組みは、利益相反を生じさせ、独立した格付けができなくなるリスクがあることが指摘されました。リーマンショック後、信用格付けの透明性や利益相反の問題が議論され、格付け機関に対する規制が強化されました。
5. 金融機関の救済とモラルハザードの問題
大規模な金融機関の救済: リーマンショック後、多くの金融機関が破綻の危機に直面し、政府は公的資金を注入して救済を行いました。これは、金融システム全体の崩壊を防ぐためには必要な措置でしたが、一方で「モラルハザード」の問題も浮上しました。つまり、金融機関は「政府が最終的に救済してくれる」と考え、過度にリスクを取るインセンティブを持ってしまうという問題です。
「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」の問題: リーマンショックでは、大手金融機関が破綻すると金融システム全体が揺らぐため、政府は救済せざるを得ない状況に追い込まれました。これにより、「Too Big to Fail」の問題が浮き彫りとなり、金融機関が巨大化しすぎることのリスクが議論されました。この問題に対処するため、金融機関の規模を制限したり、資本規制を強化する取り組みが進められました。
6. 国際協調の必要性
グローバルな危機対応: リーマンショックは、アメリカの金融危機が世界中に波及し、グローバルな金融システムが相互に強く依存していることを示しました。金融危機が一国で発生しても、すぐに他国に波及するため、各国政府や国際機関の協調した対応が不可欠であるという教訓が得られました。
G20による国際的な対応: リーマンショック後、G20などの国際的な枠組みを通じて、世界各国が金融システムの安定化や経済の回復に向けて協力する必要が高まりました。国際的な金融規制の強化や、情報共有、協調した政策対応が今後も求められることが明確になりました。
〇まとめ
リーマンショックから得た教訓は、金融機関の過度なリスクテイクの危険性や、金融商品の透明性とリスク理解の重要性、金融システム全体を監視・規制する必要性など、多岐にわたります。また、信用格付け機関の役割や、国際的な協調体制、金融機関の救済に伴うモラルハザードの問題なども浮き彫りになりました。これらの教訓をもとに、世界中で金融規制が強化され、
〇参考文献
https://torideken.com/news/thebigshort/